グランデス冒険録

十一章・鏡に映る理想郷(中編)
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獅子の月六日



博嶺神社

自室

あの夜以来、鏡の幻想郷はずっと雨だった
雨が続き、行動が狭まると鬱々とする者は少なくない
菫は特に雨が苦手だった
ある雨の日に、両親を失ったからだ

菫『雨、止みませんね』

程鉄『そうだね
雨季でもないのに、こんなに雨が降り続くのは珍しいかな』

程鉄の心も、あの日以来、複雑だった
父は何故姿を消したのか、それが解らなかった

菫『先輩
何か嫌な事、ありましたか?』

程鉄『嫌な事、か
無いと言えば、嘘になるけど』

菫『吐き出して、良いんですよ?』

菫は自身の膝を軽く叩いた
程鉄は菫の膝に頭を置き、膝枕をして貰うと、口を開いた

程鉄『もう何年も前になるか忘れてるけど
私には父親が居たんだ
その父親が行方知れずになって、グランデスに居るかもしれないと姉さんから聞いたんだ』

菫『先輩の父親、ですか?』

程鉄『スマウグ殿に仕えた伝説的な技工士だって聞いたことはあったけど
私は良く解らない、何分あの人は冒険者だったから
帰ってくる事自体希だったんだって』

程鉄が菫の顔を見上げると、菫はそれに気付いてじっと見据えた
菫の顔もまた、何かを憂い、迷った顔をしていた

菫『そうだったんですね
先輩も、迷ってたんですよね』

程鉄『菫も、なのかい?』

菫『私の場合は少し事情が異なりますけどね
父もモデルで、母も女優だったんです
でも、父は事故で急死し、母も私を一人で育てて病を患って亡くなりました』

程鉄『雨の日に、だね』

菫『はい
先輩は、これを聞いて、どう思いましたか?』

程鉄『菫も、寂しかったんだねと思ったよ』

其を聞くと、菫は顔を近付け
そして口付けをした
それまでの口付けと異なり、苦味を感じる

程鉄『菫?』

菫『先輩は
私みたいな人は、苦手ですか?』

程鉄『ううん
苦手じゃないよ』

菫『えへへ
先輩は、優しいですね』

菫の複雑だった顔が、晴れていた
程鉄の複雑な表情も、少し晴れていた

菫『大好きです、先輩
ずっと、これからも先輩と居て良いですか?』

程鉄『ああ、勿論だよ
おいで、菫』

菫『はい、先輩!』

菫は起き上がった程鉄に抱きついた
程鉄は菫を優しく抱き締めていた

翌朝

天気は未だ雨であったが、程鉄と菫の心は晴れていた
色々あって落ち着いたと言うべきなのだろうか、前よりは雨に対しての苦手意識はなくなっていた

程鉄『ねえ、菫』

菫『なんでしょうか、先輩?』

程鉄『君は、何か夢はある?』

菫は大事にしていた白い菫の髪留めをしながら口を開く

菫『先輩とずっと居られるなら、他にはなにも要りません
それと、先輩は白い菫の花言葉を知ってますか?』

程鉄『白い菫のかい?
花言葉には疎いから、解らないけど』

菫『白い菫には『あどけない恋』と『無邪気な恋』という意味が秘められてます
菫の共通の花言葉には『謙虚』『誠実』があるんですよ』

菫はニコリと笑うと、程鉄の手を取った

菫『私は
先輩となら何処までも一緒です!』

程鉄『ふふ
ありがとう、菫』

程鉄は菫と共に歩みを進めた
まだ、やるべき事は終わっていないからだ

大広間

この日、神社にあるには不釣り合いというべき大広間に、リンクスワーカーの一行と、博麗三姉妹
そして、『八雲一門』等の博麗一門に関わったギルドが揃っていた
舞香の側に居る人物こそ、八雲一門の長にして鏡の幻想郷の主である『八雲時音』が居た

時音『さて
貴方達が、縁から派遣されたギルドでしたね』

程鉄『ご無沙汰しています、時音様』

時音『そうね
程鉄、貴方と会うのは久しいわ
貴方達も知っての通り、鏡の幻想郷は未曾有の危機に直面しているわ
一手を誤れば、破滅する事は、グランデスと変わり無い状況よ』

冥沙『加えて
先刻からの雨には、人体に極めて有毒なものが混ざってる事が判明しました』

程鉄『アンデットの策略と見るべきでしょうか
これに関しては』

時音『ええ
作物には被害は無いけど、人や妖怪に中毒者が多数、犠牲者も出てるわ』

程藍『発生源はつかめたの?』

舞香『ああ
場所はカーディナル・スラムのムジナ研究所だ
少し前までは天体研究をしてたが
最近新しく入った所長によって人員が入れ替わったらしく、更に新たに加わった研究員の様子がおかしかったと前の職員から聞いている
かなり深刻と見て良い』

程藍『成る程ね
所謂、浸透作戦という奴かな』

程鉄『だとしたら
真求さんが危ない!』

冥沙『そうですね
真求さんは間違いなく狙われるでしょう
人の動きが鈍る今だからこそです』

程蘭華『だが
あの雨雲を祓わない限りは下手に俺たちも動けないな』

時音『それなら
貴方達を転送する事が出来るわ
分担する必要があるのだけど、どちらも危険な任務になるわ』

程鉄『片方は真求さんの護衛
もう片方はムジナ研究所の制圧ですね』

時音『ええ
リンクスワーカーには負担が大きいかもしれないけど、協力を頼みたいわ』

程鉄『解りました
私達に出来る事なら助力します』

程藍『それに、真求もそうだけど
ラボから戻ってない学者の救出も可能ならしておきたいわ』

舞香『恐らく絶望的かもしれないが
頼めるか?』

程藍『任せて頂戴、舞香』

舞香と冥沙達はムジナ研究所に転移された

程鉄『じゃあ
私達は稗田屋敷の護衛かな』

時音『そうなるわね
あら、紅、どうしたのかしら?』

舞香の側近であり、八雲四天王の一人である『紅』が慌てたように入ってきた

紅『た、大変ッス
アンデットの軍勢が押し寄せてきたッス!』

時音『あら、それは面倒ね
迎撃部隊を用意出来ない状況、リンクスワーカーのメンバーを数人、防衛に借りる他無いわね』

陸斗『それなら、俺達に任せてくれ』

華『こういう事は私達が得意だよ』

鈴鹿『要するに晴れるまで死守すればいいのよね』

鈴鹿達の発言に時音は頷いた

時音『晴れてしまえば下級アンデットは自ずと消滅していくわ
護衛を任せる部隊以外は、神社の防衛に専念して頂戴
程鉄、貴方は真求の護衛よ、任せたわね』

程鉄『解りました
私達も死力を尽くしましょう』

程鉄はメンバーを選出し、稗田屋敷に転送された
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