グランデス冒険録

十六章・驚異との戦い(前編)
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天秤の月五日

帝都領

城塞都市『ノーザン・べラム』

予期していた事が起きてしまった、遂に驚異『腐敗巨人ネルゲル』が目覚めたのだ
復活したネルゲルはノーザン・べラムの住民を取り込み、帝都に向かおうとしていた
だが、リンクスワーカーやレイギスが無策な訳がなく、既にノーザン・べラムに居た民は退避を完了していた
これもあり、天界で腕を失っていた事もあって、不完全な復活だった

ネルゲル『おのれ
復活の際の贄を逃がすとは、貴様達にしてやられたか!』

レイギス『外道の考える事など知れている
貴様を滅ぼし、帝都に安寧を取り戻すとしよう』

ネルゲル『ふん、貴様ら弱卒に出来るか?
先刻は雑魚に阻まれたが
今回はそうはいかんぞ!』

ネルゲルは雄叫びをあげ、斧を手に取った
何かを混ぜたのか、その切っ先は、ドロドロである

レイギス『錬金術師の開祖の秘宝を真似た贋作が武器か』

ネルゲル『何とでも言え!
アゾットと同じ原理で作られた『融解の斧』で
貴様達を根絶やしにしてくれるわぁ!』

ネルゲルは斧を振り回すと周囲の住居が一振りで全て溶かされた

程鉄『レイギス、どうするんだ?
これでは、下手に近付けんぞ!?』

レイギス『確かに、あれに無用意に近付けば命は無い
だが、今の俺には、奴が居る』

レイギスは懐から聖石を取り出すと、その聖石から光が溢れた
これを見た程鉄、もといウロボロスが驚いた顔をした

ウロボロス『ああ、リョフ!
貴方とまた会えるなんて思いもしませんでしたわ!』

リョフ『ウロボロスか、お前も此処にあるか』

程鉄『レイギス
お前も聖石に選ばれたのか』

レイギス『ああ
フランと死線を乗り越えた際にな』

リョフと呼ばれた神獣を見たネルゲルは愕然としていた

ネルゲル『ば、馬鹿な!
貴様が何故此処に居る!?
貴様の魂は既に消えていた筈だ!』

リョフ『そこの帝王が俺を呼び覚ました
ウロボロスと会う為を思い、何度でも立ち上がってやる!』

程鉄『ウロボロスとリョフは夫婦だった、か』

リョフ『お前が、ウロボロスの契約者か
良い面構えだ、ウロボロスの見る目は間違ってないな』

リョフは挨拶代わりに弓をネルゲルの腕の一つに放ち、消し飛ばした
あまりにも一瞬の出来事だった為、ネルゲルも痛みが生じるまで気付けなかった

ネルゲル『グガァァ!?』

リョフ『他愛もない
これなら、かつての貴様の方が強かったろうな』

程鉄『弓を以て敵の腕を射抜いたか
リョフの腕前は随一か』

ウロボロス『リョフの凄さはそれだけじゃないわ
彼はあらゆる武器を使いこなしたの
性格は悪いけどね』

ウロボロスの言わんとする事は解った気がした
リョフは粗暴であるが、軍人としては非常に優秀だ
不完全な復活を遂げたネルゲルが劣るのも納得である

ネルゲル『ぐぅっ、調子に乗るなよ!』

程鉄『問おう、ネルゲル
貴様は何故驚異となった!』

ネルゲル『知れた事、虐殺の為だ!
他の驚異はエデン復興を夢見ているが、叶うわけがない!
夢想に溺れる革命など、結局は殺人でしかない!』

程鉄『他の驚異に比べて異端とはそういう意味か
虐殺とは随分な危険思想だな
革命を為したとてそれでは味方は居ないだろう、人道にも反する』

ネルゲルが動揺した、後のプランがないのだと、程鉄は感じ取った
それなら尚更だ、負けるつもりはない
しかし、程鉄をレイギスが制止した

レイギス『奴等が俺の先祖達が産み出した罪ならば
俺が清算すべきだろう
程鉄、お前は控えてろ』

程鉄『レイギス、解った
武運を祈る』

ネルゲル『ふん
貴様は戦下手であろう、少し前に『喰らった』民がそう言ったぞ?
貴様如きに遅れを』

レイギス『黙れ』

レイギスはネルゲルの足を切り捨てた
その時、レイギスが手にしていたものに程鉄は驚いていた

程鉄『ソイツは
ベルモッカの持っていた鉞!?』

レイギス『ああ、あの後
死した筈の奴が俺を呼んだ、この鉞を託して去った
不思議だな、かつて両親を殺した事もあって憎悪してた筈のアンデットの武具でありながら使いやすく、手に馴染む』

程鉄『復讐を果たし、為すべきを見つけた
貴方が本当に為したい事は』

レイギス『ああ
俺の為したい事は
生が有る限り、フランの事を守り抜くのみだ!』

レイギスの持った金色の鉞はネルゲルを切り裂くと、コアを露出させ、それを砕いた
ネルゲルは何があったか解らず、呆然としていた

ネルゲル『ば、馬鹿な
貴様、何をしたというのだ!?』

レイギス『貴様はコアを砕くのみで片付くというのをみすみす晒した
天界と文都で貴様の実力を公開したのが運の尽きだ』

程鉄『レイギス、強くなったな』

レイギス『そうか
義兄たる程鉄に誉められるなら確実に成長しているんだろうな』

レイギスは崩れゆくネルゲルを見てそう呟くと、リョフを帰還させ、レオをしまった

ネルゲル『貴様達
これで終わると思うなよ!
俺が朽ち果てようとも、まだ驚異は居る!
貴様達はそれに抗う事も出来ぬわ!』

程鉄『諦めてるからだろう、それはな
諦めずに居れば、どうにでもなる
人生とはそういうものだ』

程鉄は呆れたようにそう言うと、消えゆくネルゲルを再び見据えた
ネルゲルはもう言葉を発しない、力の無い瞳が見えた

程鉄『かつて
アスラの王だったのに、惨めなものだ』

レイギス『アスラは今
グランデス大陸には居ないと聞く
ベルモッカの暴虐が招いた禍は今も尚という感じか』

程鉄『存外
別の大陸で国を興してるかも知れないぞ?
ヴィシュヌ公のような名君も産み出した種族だからな』

『アスラ』は六つの腕を持つ亜人族だ
彼らは比類なき怪力の持ち主であり、独自の文化を持っていたという
現在こそグランデス大陸では存在を確認出来ないが、『異邦見聞録』の作者である航海士の『マルコフ・マッキントッシュ』曰く『『クシャナ大陸』という異邦の地で見た』という伝聞も聞く
グランデスはまだ見ぬ地が多いのだ

程鉄『他の大陸とも結び付きを得れば
新しい発見もあるかもしれないぞ』

レイギス『そうかも知れないな
事が落ち着いたら、開拓するのも悪くないな』

レイギスは静かに異国に想いを馳せていた
若き獅子は、新たな道を歩む事に夢を見るのだった
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