グランデス冒険録

十七章・驚異との戦い(後編)
1/5ページ目

天秤の月十八日

玄都領

ルグラス海峡

玄都に一番近い海域であるルグラス海峡に、驚異が一柱である『渦潮之海魔』が現れた
海軍が貧弱な玄都正規軍では足止めが精一杯であり、マトモに攻撃出来ない状況だ

程鉄『とは言え
被害が軽微な分、よく持ちこたえたと言うべきかな』

リリウム『海戦は私達の苦手とする所ですからね
程鉄さん達の救援は助かります』

程鉄『私も得意とは程遠いけどね
蘭華や姉さんみたいに泳げる訳じゃないし』

程蘭華『ああ
兄貴はよく溺れてるもんな』

蘭華の発言で程鉄は苦笑していた
それも仕方ない話である
程鉄は何より泳ぐのが苦手である、幼少期に川で溺死寸前になり、水が怖くなったのだ

程鉄『何とか陸地に引きずり出したいが、手が無いよな』

マリオン『ああ
君にも苦手なものはあるんだね?』

程鉄『今の声は、マリオン!?』

マリオン『君の救援に来たよ
玄都に来た驚異を打ち払う為、武都の戦力も使ってくれるかな?』

リリウム『良いのですか?
マリオン様は先刻にタラスクと戦ったと聞きましたが』

マリオン『安心してよ
聖都には劣れど、私達の海軍も強いからね』

程蘭華『あれが
兄貴をやり込めた今の武王か』

マリオン『ああ、君は初めてかな、義妹君
私は『マリオン・J・ブランドー』
武王を務めている者だ』

マリオンはスカートをつまみ上げ、一礼した
蘭華は一応の警戒はしたが、彼女から感じたものから、直ぐに警戒を解いた

程蘭華『ダンピール、か
他人に警戒を抱くわけだな』

マリオン『人を見る目は義兄譲りか
そうだね、私は他人に信を置くのは難しい人だろう
だけど、程鉄はそんな私に信じる道をくれたんだよ』

程蘭華『ああ、マリオンつったか
アンタもそうなんだな』

程鉄『んで、だ
具体的な策は何だ?』

マリオンは程鉄の発言にこう返した

マリオン『釣りだすのさ
君の操舵技術なら、海魔を釣りだすのも余裕だろうね』

程鉄『陽動、か
確かに船の操縦には自信はあるが
陽動という事は、そういう事だろう?』

程鉄の発言にリリウムは首を傾げたが、蘭華は察したのか、程鉄を庇うようにした

程蘭華『兄貴が泳げないのを知っててやらせるのか?
その策を』

マリオン『ああ
だから、確認をしたかった
命の危機に曝されるだろうからね』

程鉄『解った、その策に乗ろう
危険な任務を頼むわけにはいかないからね』

程蘭華『兄貴!』

程鉄『蘭華
万一俺が失敗しても、躊躇わずに戦い抜け
俺を助けるのは、それからでも遅くないからな』

程鉄は不安そうな顔をする蘭華を撫でた
蘭華にとっては兄が一番である、喪いたくないのは事実だろう
しかし、こうしないと厳しい相手だと、程鉄も理解していた
囮の為に程鉄が船を動かすのはそれから一時間後だった

海魔『なんだぁ
蝿がうろちょろしおってからに』

程鉄『貴様に恐れが無いのなら
私の首を取ってみろ!』

程鉄の挑発に乗った海魔が、程鉄の乗る船を攻撃しようとする
しかし、船の操舵技術に長ける程鉄は素早く回避し、陸地に引き寄せ始めた
徐々に陸が見えてくるが、近付くにつれて攻撃のペースが上がる
船も傷付きはじめていた

程鉄『ははは
討ち取るには至らないか
だが、ここまでだな』

海魔『なぁにをごちゃごちゃと
これでもくらえ!』

程鉄『ぐっ!
ふふふ、これで狙いは果たしたか
後は、陸の味方がなんとかするだろうさ』

程鉄の乗る船が海魔の触手で貫かれると、中に仕込まれた火薬が炸裂し、海魔に大打撃を与えた
程鉄は爆風で海中に叩き付けられるように投げ出され意識を失いながら、海に沈んだ

程鉄(ああ、これは無茶苦茶な事をしたな
よしんば生き残れても説教は免れないだろうけど
海ってこんなに蒼く暗かったのか
俺は、役にたてたのやら)

程鉄の意識は更に遠退く中、誰かが程鉄の手を掴んだ
それが誰かは解らない、何故なら程鉄は既に意識を手放したからだ

数時間後

シェルデナ城

医務室

程鉄が次に目を覚ましたのは、シェルデナ城にある医務室だった
近くでは蘭華が泣き疲れたかのように寝ていたが、程鉄が目覚めたのと同時に起きた

程鉄『蘭華、お前』

蘭華『兄貴の馬鹿!
何であんな無茶な事をするんだよ!』

程鉄『勝利の為だ
海魔は陸地でも触手を削らないと厳しいと考えたからな』

程鉄は海魔を観察した時、触手がそれぞれ再生する事を察知していた
あの再生能力を潰す為にも下策は覚悟の上であの特攻に近い陽動を行った
それにより大幅な弱体化をした海魔は難無く撃破出来たと、報告を受けていた

程鉄『結果として無事に大事を為せた
それで良いじゃないか、蘭華』

程蘭華『そうじゃねぇだろ
兄貴、あれは失敗してたら兄貴とて無事じゃなかった
何で毎回そんな危険な事に兄貴が出向かなきゃならないんだ!』

程鉄『蘭華
大計を為せない者が世界の命運を託されるなど、浅はかだと思わないか?』

程鉄は蘭華を宥め、抱き寄せた
蘭華は少しだけ不満そうな顔をしていた

程蘭華『解ってる
だが、解らんのだ、俺達は何の為に戦ってきた』

程鉄『蘭華
忘れてはいけない事がある』

程蘭華『忘れてはいけない、だと?』

程鉄『ああ
大義を捨てた日には俺達だけじゃなく、グランデスの未来は閉ざされる
だからこそ、耐え凌ぐんだ
蘭華、俺達は程悦ではないんだ』

程鉄は蘭華を撫でながらそう諭していると、マリオンが入ってきた
その衣装を見た程鉄と蘭華は驚いた顔をした
白装束、ミアズマにおいて自害する際に着る着物だからだ

程鉄『マリオン、その衣装は』

マリオン『程鉄
君に危険が及ぶ事は避けたかったが
此度の戦いで死にかけたのは私の采配ミスだ
自害して償わないとならないだろう』

程蘭華『馬鹿野郎!』

蘭華はマリオンが持つ剣を弾くと、襟首を掴んだ

程蘭華『お前が死んだら武都はどうなる!
一国の王が、軽々しく命を投げ捨てるなんて真似をするんじゃねぇ!』

程鉄『止せ、蘭華!
マリオン、お前も早まるな
過ぎた事を言うのは義に非ずだ
マリオンにその気があるのならば私に大役を頼む真似はしなかっただろうし、暗殺してたろう』

マリオン『何故だ
君は怒らないの?』

程鉄『私は
誰かの犠牲の下でなる大義などいらない、それだけ』

程鉄は弾かれた剣を拾い上げ、マリオンに渡した
マリオンは判りかねたが、程鉄が静かに涙を流したのは直ぐに理解した
[指定ページを開く]

次n→ 

<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。




w友達に教えるw
[ホムペ作成][新着記事]
[編集]

無料ホームページ作成は@peps!
無料ホムペ素材も超充実ァ