グランデス冒険録

二十一章・異界杯、開催す(後編)
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人馬の月一日



異次元コロシアム

医務室

程鉄はベッドで目を醒ました、自分が負けた事は理解していた
それが、悔しくてならない訳ではない
それよりも、義妹の成長が何より嬉しかった
程鉄は体を起こすと、近くには冥沙が居た

程鉄『派手にやられたな
強くなったじゃないか、冥沙』

冥沙『程鉄君、私は』

程鉄『言うな、俺が弱かっただけだ
活動期間も五年の差があるんだ、仕方ないとは思う』

冥沙『それはそうだけど
あの時、程鉄君を死なせたんじゃないかって、怖くなった』

程鉄『おいおい
何のためのジャッジロウだよ
冥沙が全力出したって、あの場じゃ死にはしないぜ?』

程鉄は素の口調で話をしていた
この場に居るのは冥沙だけ、程鉄はそう理解していたからだ

冥沙『ほんと、無茶ばかり』

程鉄『俺の性格は知ってるだろ
誰かの為に命を張るなんざ、当たり前みたいな男だしな』

冥沙『それは蘭華からも聞いたよ
君は本当に変わらないね』

程鉄『やんちゃなのは変わらないもんだ
あれは俺の性分みたいなもんだぜ?』

冥沙『あはは、違いないね
あ、そうだ、程鉄君
昔の約束、覚えてる?』

程鉄『ああ
成人したら結婚しよう、だよな?
忘れてないぞ、あの日からな』

冥沙『あ、良かった、忘れてなかった
程鉄君との子供も少しずつ、大きくなったよ』

程鉄『ああ、芽亜だな
こないだは桃花教官の指導受けてたから会えなかったが、元気そうで何よりだ』

冥沙『ふふ、程鉄君と私の娘だよ?
グレイシ君と椎名の子にも負けないんだからね!』

程鉄『あまり言い過ぎるなよ
芽亜がプレッシャーに感じるし、瑠花や細波が黙ってないぞ?』

冥沙『それもそっか』

程鉄『ああ、そうだとも
あの二人も強くなるさ
うかうかしてられないぞ?』

程鉄は冥沙の頭を撫でていた
瑠花は芽亜の妹にあたるが、彼女が祖母に一番近いとされる
背丈を除けば、だが

程鉄『それに、子供達も強いと思う
芽亜に刺激があるのは良い事だろうさ』

冥沙『なんか
程鉄君がそういう風に言うの珍しいね』

程鉄『そうか?』

冥沙『うんうん
私、程鉄君の言ってた事、覚えてるよ
そう言ったの、覚えてた限りだと一回も無かったからね』

程鉄『子持ちになって気付く事も増えたからな
父上や、スマウグ殿の気持ちが解った気がする』

冥沙『ああ
程錫義父さん、子煩悩だったからね』

程鉄『スマウグ殿も娘が可愛かったんだろう
俺も気にかけてたりしてな』

冥沙『程鉄君』

程鉄『なんだ?』

冥沙『ずっと渡したかったものがあるんだ
受け取ってくれる?』

冥沙はそう言うと指輪を程鉄に渡した
宝石は桜を思わせる綺麗な色をしたモルガナイトがついていた

程鉄『コイツは』

冥沙『ふふ
程鉄君が私に昔くれたモルガナイトの原石をやっと磨ける位になったの
指輪を作れるまで、大分時間がかかったけどね』

程鉄『あの時、手を握りしめたときに指のサイズを把握したのか
それでも彫金技能をここまで上げるのは大変だったろうに』

冥沙『私も程鉄君の背中を追いかけたからね
こっちの技術においては、全然程鉄君には勝てないけど』

程鉄『十分だ
指輪に銘を刻める位なら、彫金職人としても食べていけるぐらいの腕前だ
もっと胸を張って良い』

程鉄がそう誉めると、冥沙は嬉しそうにしていた
彫金は主にアクセサリーの開発に関係するスキルだ
赤字になりやすい為、積極的にあげようとしない冒険者も少なくない
ただ、大好きな人に贈り物をしたいという者や自分の作ったアクセサリーを使って、役立ててもらいたいという願いから履修して一流職人になった者も居る
程鉄は武器作成が主だが、端材を無駄にしない為にスキルを履修した事で知られている

程鉄『冥沙、俺からも贈り物だ
是非受け取ってくれ』

冥沙『あ、これって
私が昔、程鉄君に渡したタンザナイトの』

程鉄『そう、夕暮れの夜空を閉じ込めたという言い伝えがあるタンザナイトと呼ばれた宝石
それを冥沙は知らずに俺に渡してきたんだったな
今はしっかり解ってるみたいだから、嬉しい限りだ』

タンザナイトは『高貴』『誇り高き人物』『知的』『冷静』『希望』『神秘』の宝石言葉を持つ
一方のモルガナイトは『純情』『優美』『愛情』を宝石言葉としていた

冥沙『あはは
程鉄君、私の事も見てくれてたんだね』

程鉄『勿論だ
見捨てはしないし、忘れもしない
一時期はショックで忘れかけてたけど、な』

冥沙『そこは責めないよ
程鉄君にだって事情はあったし、義父さんの件もあるもの』

程鉄『ありがとな、冥沙』

冥沙『うん
私が貴方の希望になるわ、タンザナイトに誓ってね』

程鉄『じゃあ
俺からは変わらない愛を、モルガナイトに誓おう』

程鉄はそう言うと、冥沙を抱き寄せた
冥沙はあの日から大きくなったが、抵抗もせず、抱き締めてきた
彼女の体はとても軽い、昔も、そして今も

程鉄『冥沙』

冥沙『ううん、私から先に言わせて
ありがとう、程鉄君、私は、貴方に会えて良かったわ』

程鉄『それは此方の台詞でもあるんだがな
冥沙、生きていてくれて、ありがとう』

冥沙『っ!?
えへへ、程鉄君、私は幸せだよ』

程鉄『ああ
大会ももうじき終わる
俺達を破った冥沙達の活躍、期待してるぜ』

程鉄は口付けを交わした
甘く、蕩けるような感触が、包み込む
それが全て泡沫の夢だったとしても、忘れはしないだろう

翌朝

医務室

目を醒ますと、そばに冥沙はもとより芽亜も同じベッドで寝ていた

程鉄『芽亜も居たのか』

芽亜『あ、お父様
お久しぶりです!』

芽亜はニコニコしている
礼儀正しい彼女だが、彼女もまた、博麗の血を引く者である
ルーガルーである為、彼女には獣耳と尻尾があった
何より、冥沙や乙夢の血によるものなのか、桜色の髪をしていた

程鉄『芽亜
一つ、私と約束してほしい事があるんだ』

芽亜『約束、ですか?』

程鉄『ああ
君は将来、博麗一門の跡取りになる
その時は、妹達や仲間と協力して、より良い次代を築いてくほしい
芽亜なら、出来る筈さ、私や冥沙の娘だからね』

芽亜『はい
お父様やお母様のご期待に添えるように
私、がんばります!』

芽亜の瞳は、一切の淀みが無かった
そこは流石は冥沙の娘という事だろう
程鉄は、そんな芽亜や子供達が描く未来を、彼女から感じ取った
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