グランデス冒険録

外伝・隙間の章
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双子の月17日

九十九学園

指導室

程鉄は珠由と面談をしていた
彼女は将来の夢を決めかねているのか、アンケートが白紙だったのだ
程鉄はそれを心配し、彼女を呼んだ

珠由『あ、先生
お説教、かしら?』

程鉄『説教というか、質問というか』

珠由『先生も大変ね
不良生徒にもこうしてちゃんと応対して』

程鉄『自分で不良って言うかなぁ
出席日数的にも皆勤賞だし、文句なしに優等生だろうに、土橋君は』

珠由『そう見えてるだけかも知れないわよ?』

珠由はそう冗談めいたように言うと、程鉄をじっと見て口を開いた

珠由『先生、人間じゃないのね』

程鉄『見えてるのか、土橋君
という事は、君も』

珠由『ええ
私は、土蜘蛛と呼ばれる妖魔の末裔よ
チキュウの歴史や伝承を読んだなら、知ってるわよね?』

程鉄『そう、だな
ニホンの象徴であるミカドに牙を剥き、それゆえに迫害された妖怪
その末裔が、君だったのか』

珠由『ええ、私は化け物よ
先生も、私を拒むのよね?』

珠由の姿が人ではなく、蜘蛛に近い形をしていく
それは、程鉄を獲物と判断したような殺意も含んでいた
しかし、程鉄は動じない

程鉄『いや、寧ろ素敵だと思う
可愛いじゃないか、その姿』

珠由『は、え?
か、可愛い!?』

珠由は予想だにしてなかった返答に困惑した
程鉄は恐れずに歩み寄り、珠由を撫でた

程鉄『それだけ腕があるんだ、きっと器用な事も出来るんだろうからね
機織りとか、得意だろう?』

珠由『え、あ、ええ
衣服とか、制服以外は全部手作りだけど』

程鉄『それは凄い事だよ
私はそういうの、出来ないからさ』

珠由『そ、そうかしら?』

珠由は呆気にとられていた
同族も全滅し、誉められたりした事は無い
彼女を誉めたのはゲルミウスと彼だけだ
誉められる事に、慣れていないのだ

程鉄『私は鍛冶や料理、彫金は出来るけど
裁縫はどうにも苦手でね』

珠由『そ、そうなのね
私、良ければ先生の服、一着縫ってみるけど』

程鉄『おお、助かるよ
君の作る服だ、きっと着心地も良いんだろうね』

珠由『先生
あの、でも、私は』

程鉄『言わなくても解るよ
君はゲルミウスの部下だ
私にさっき殺意を向けたのは、暗殺を依頼されたからだろう?
私の命で君が満足するなら、私はそれでも良い
誠を死なせた罪は、拭えないからさ』

珠由『何で、それを解ってて』

程鉄『珠由
君は迷っているんだ
私にはそう感じ取れたよ』

程鉄は珠由をじっと見つめた
その瞳を見た珠由は殺すことに躊躇いをもってしまった

程鉄『ゲルミウスに忠義があるなら、それは果たすべきだ
已む無き事情があるなら、私はその末で刃を交えるのも仕方ないと思う
君の守りたいものはなんだ?』

珠由『私は、私はっ!』

程鉄『悩めるだけ、良いんじゃないかな
悩む事すら出来なくなるよりは、ずっとね』

程鉄は珠由を撫でた
珠由は両親を早くから亡くしており、同族も居ないし迫害され続けていた
程鉄が撫でた事は、珠由にとっては嬉しかった
九十九市や九十九学園では種族を隠して生きていたが自分の姿を知っても尚接してくる人は初めてだ

珠由『私は、先生を殺したくない
なんで、貴方が敵に居るのか、解らないわよ』

程鉄『人生はそういうものだよ
人は悩み、悩んだ末に最善の答えを探す
それが出来る、ただそれだけでも素晴らしいんだ』

珠由『先生、貴方も人でしょうに』

程鉄『亜人だけどね』

程鉄は一応ツッコミをしていたが、珠由を拒まずに撫でていた
珠由は満更でもなさそうにしている

程鉄『ともあれ
せめてもの義理は果たした方が良いのは確かだ
ゲルミウスが君を蔑ろにしていないのは君の想いから解ったからね』

珠由『ん、仮に、先生が勝ったなら、私は』

程鉄『殺さないよ、寧ろ歓迎するさ』

程鉄の返答は即決だった

珠由『本当に、いいの?』

程鉄『言ったろう?
私は何であれ、受け入れるって、ね』

珠由『そんなの、ズルいわよ
断れないじゃない』

程鉄『ふふ
まぁ、私が生きてれば、ですがね』

そう言うと程鉄は珠由から手を離した
珠由はもの悲しそうな目を此方に向けていた

程鉄『全てが片付けは私は戻る事になります
その時までに、決めてくださいね?』

珠由『ん、解ったわ』

程鉄『ええ』

珠由『でも、それなら
置いていくのだけは止めてちょうだいね』

程鉄『解ってますよ』

程鉄は指導室を出ようとした時、珠由が声をかけた

珠由『ゲルミウス様は、最初からアンデッドではなかったの
可能なら、助けて欲しいわ』

程鉄『それは私は保証しかねます
魂がまだ歪みきっていないならば、転生は叶うかと
その辺りは縁様次第ではありますが』

珠由『可能性があるなら、それで良いわ
あの人は、大事な人と別れ別れになって、寂しいはずたから
会わせてあげたいの』

程鉄『別れ別れ、か』

程鉄は少しだけ、含むところがあった
記憶が混濁している為、朧気ではあるが、大事な人と別れてしまった事があった気がしたからだ

程鉄『珠由、君の望みは解った
その願い、可能な限り私が叶えるよ』

珠由『ありがとう、先生』

程鉄はそれを聞いた後、改めて退室し、人気の無い場所で涙を流した
思い出したい、なのに思い出せない
その感覚が、程鉄に一つ恐怖を与えていた

程鉄『大事な事の筈なのに、思い出せない
なぜなのだろうな』

鈴鹿『あれ、程鉄じゃん
どうしたのさ、そんな場所で』

程鉄『あ、鈴鹿
いや待て、その格好は』

鈴鹿『あー、これ?
飛鳥の荷物を漁ってたら見つけたのよね
程鉄、制服フェチでしょ?』

程鉄『そうは言ってないだろ』

鈴鹿が着ていたのは九十九学園の制服だ
鈴鹿のスタイルは整っているが、胸に関しては飛鳥より大きいのだろう、キツそうにしていた

程鉄『それで、何かあったか?』

鈴鹿『ん、貴方が寂しそうにしてたから、来たのよ
気配察知って奴ね』

程鉄『便利だな、それ』

鈴鹿『そうじゃなきゃ
源平合戦で生き残れないわよ』

鈴鹿は程鉄に近付き、そっと撫でた
源平合戦については史実通りであるが、彼女が宿る刀『小烏丸』は正史と異なる遍歴を持っている
小烏丸は平家の側近であった東雲家が壇之浦を前に預かって逃げ、その末裔が九十九市の礎を築いたのだ
以後、東雲家の家宝として代々受け継がれ、国宝指定されている小烏丸を模したレプリカを国に献上している
鈴鹿は偶然から生まれたと、語られている
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