グランデス冒険録

五章・九十九学園の怪異(前編)
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双子の月二日

九十九学園

職員室

程鉄に声をかけた女教師は、他の教師とは少し雰囲気が違った、他の生徒や教師からして異国の人間だというのは違いない
何より、程鉄が気が付いたのはそれだけじゃない
彼女から魔力を感じ取ったのである

???『貴方もその事件に興味があるのかしら?
火遊びは感心しないわよ?』

程鉄『貴方は?』

???『私?
私は『メリッサ・ファーリス』
ALT(外国語指導助手)よ』

メリッサと名乗った教師が近寄って資料を眺め、程鉄にのみ聞こえるような声で囁いた

メリッサ『貴方は『この世界の人間』ではないわね
狼の耳に尻尾
さながら、ワーウルフって所かしら?』

程鉄『何処まで知ってるんですか?』

メリッサ『私は何も知らないわ
私も、この事件に巻き込まれた身ってだけ
貴方との共通点をあげるなら、少なくとも私も『この世界の人間』ではないという事ね』

メリッサが更に近寄ると程鉄の手を見ると、得心がいったような顔をした

メリッサ『私も、貴方の手伝いは出来ると思うわ
怪物との戦いは、私も経験してるからね』

程鉄『貴方もですか?』

メリッサ『ええ
私は元々『世界を喰らい尽くそうとした竜を狩っていた』わ
こっちに来てからはもっぱら『アンデット狩り』ね』

メリッサはそれだけ言うと体を離し、ウインクした
程鉄はドキッとしたが、すぐに我に返り

程鉄『メリッサさん、貴方は』

そう問おうとしたが、一陣の風と共に視界が遮られ、彼女の姿はかき消えた

程鉄『目標が同じなら
また会える、か』

程鉄はそう言うと、教室まで向かった

三年教室

生徒達が騒いでいる中、一人の女子生徒がその騒ぎを鎮めた、クラス委員長の『東雲心愛』である

心愛『皆、今日は新しい先生が来る日よ
少し落ち着きなさい』

???『えー、いいじゃんか、心愛
どうせ失踪するかも知れんのだしさぁ』

心愛『そういう問題じゃないのよ、誠
確かに最近は多いけども』

いい加減そうな物言いで心愛に言うのはクラスメイトの『伊島誠』である
他の生徒達もそうだそうだと言うが、一人だけそんななか、うずうずとしている生徒と本を読んでる生徒が居た

心愛『ん、どうしたのよ、華』

華『んー
次の授業が体育だからうずうずしてるの!』

心愛『貴方は相変わらずね』

うずうずしていた生徒『桜庭華』は既にジャージ姿であり、体育はまだかと楽しみにしていた
そんな中、程鉄が入室したのを見て生徒達が静まり返った

程鉄『えーっと
今日から新しく君達三年の担当をつとめる程鉄だよ
皆、宜しく頼むね?』

心愛『はい、先生
宜しくお願いします!』

華『んー?』

華が程鉄を見て首を傾げた
それに気付いた程鉄が

程鉄『んと、何かありましたか?』

と問うと、華が首を左右に振り

華『あ、いや
先生からちょっと違和感がある気がして』

程鉄『んー、そうか
君、名前は?』

華『あ、はい、桜庭華って言います!』

程鉄『桜庭君だな、覚えておこう
それはそれとして、君の格好、皆と違うな』

華『ああ、これですか?
体育が楽しみでつい』

程鉄『校則的には無問題なのか、成る程』

程鉄が校則が書かれた手記を見た後、授業を始めた
程鉄の担当は漢文であり、教科書とにらめっこしていた
漢文はグランデスにおけるミアズマの古言語であり、程鉄もあまり知らないのだ

心愛『あ、あの
先生、大丈夫ですか?』

程鉄『あ、うん
大丈夫だよ、むぅぅ』

華『先生、臨時教諭だよね』

程鉄『そうだね
人材不足って大変だね』

程鉄も若干諦めた顔をしたが、見かねた心愛が近付いてフォローした
そうこうしてる内にチャイムが鳴り、授業が終わった

程鉄『き、今日の授業はここまで
ま、その、お疲れ様』

程鉄が一番疲れていた
ほとんどの生徒が次の授業に備えるなか、心愛だけ残った

心愛『先生
もしかして得意分野が全然違うんですか?』

程鉄『うん
技術なら出来るんだけど、ミアズマ古語じゃなくて漢文はね』

出身の関係もあるが、得意分野ではない事をしていた程鉄は、くたびれたという顔をしていた

心愛『ミアズマ言語?
先生、何か、変ですよ?』

程鉄『あはは
そうかもしれない、慣れないな、こういうの』

程鉄はそう言うと少し自信をなくしたように言った
すると、心愛は手をとり、何処かに引っ張って行った

九十九学園

屋上

程鉄『ここは?』

心愛『ここは私の大好きな場所なんです
嫌な事があったら、此処で泣いたりして、空を眺めるんです』

風が吹き、程鉄達を包む
その風に吹かれると、程鉄の心の中にあった嫌なものが何処かに吹き飛んだ気がした

程鉄『東雲君は嫌になる事はあるのかい?』

心愛『割りとありますよ
学園で学んでる生徒が行方知れずになってる事
友達が安らかに暮らせない事と、言い出せばきりがないです』

程鉄は心愛の方を見ていた、彼女は憂いの表情をしていたが、それも去ることだが、ある事に気が付いた
心愛は人間ではない、という事だ
いや、実際には半分が人間、もう半分が人間じゃない、という事である

程鉄『東雲君
君はもしかして』

心愛『?』

心愛が疑問を持ったが程鉄がチャイムが鳴ったのに気付き

程鉄『いや、何でもないよ
授業の時間だから、急いだ方がいいよ』

心愛『あ、はい
では、また後で』

心愛が去った後、程鉄は空を見上げた
空は澄みきった青空だが、この世界にもアンデッドが居る
程鉄は歯噛みをしていた
そこに再びメリッサが姿を現した

メリッサ『さっきぶりね
貴方も心愛からの違和感に感付いたかしら?』

程鉄『あれは半人半妖ですね
私の住む世界でも、比較的に良く見ます』

メリッサ『この世界だと
妖怪なる生物も存在するのね』

メリッサが本に記録し、程鉄を見ていた

程鉄『どうかしましたか?』

メリッサ『少しだけね、考え事よ
貴方を見てると、仲間を思い出すわ、性別は違うけどね』

程鉄『そう、ですか?』

それは程鉄には解らなかった
けれど、彼女が友達と離ればなれになり、一人ぼっちという状況を、程鉄は放っておけるような人ではなかった

メリッサ『貴方は不思議ね
何故か解らないけど、一緒に旅をした気がするの』

メリッサは程鉄をそっと撫でた
その瞳は、どこか寂しそうであった

メリッサ『私に、安息はあるのかしら?』

程鉄『無いなら作ればいいのさ』

程鉄はそう言い、静かに瞳を閉じた
メリッサは、次の授業まで程鉄を撫で続けていた
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