novel

†@PreciousDays†
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少しだけ涼しくなってきた九月の帰り道。
でもまだちょっと暑い。
「ねーハヤトくんーねぇねぇ」
隣をちょこちょこ歩いてついてきながら何か騒いでる心奈。
「待ってよーねぇねぇー、聞いてるのーねぇー」
「聞いてるよ、しつけぇ」
「ねぇねぇハヤトくん、暑いねぇ」
「なんだよさっきっから」
質問してみると、待ってましたと言わんばかりの笑顔が返ってきた。
「あれ。あれ食べたいの。ハヤトくんと。」
「何が」
「そふとくりーむー」
「は?」
帰り道には鯛焼き屋さんというのに、夏場になるとソフトクリームを売り出すという謎の店がある。
多分その店のソフトクリームのことを言っているのだと思う。
「暑いしー、ね、食べようよ」
「・・・早く帰りたいんだけど」
「決定決定、行きましょー」
無理やり連れて行くなら、いちいち聞かなくてもいいんじゃないか・・・

「ありゃ?」
「あーあ、残念だなぁ心奈」
鯛焼き屋さん、どうやらもうソフトクリームを売るのは終了したらしい。
レジのおばさんにそう言われた。
「えー、そふとくりーむー・・・」
「あきらめろよ、ない物はないんだから」
「なんでハヤトくんはそうやって冷たいの」
「わがまま言うなってこった」
「むー」
仕方なく帰り道を歩き進める。
あまりにも心奈がしょんぼりしているから、どっかでアイスとかでも買ってやろうかと思ったが近くにコンビニとかがない。
不便すぎるだろ。

「あ、ハヤトくん。あのね」
沈んでうつむいてた心奈がふいに顔をあげた。
「何」
「来年。来年食べようよ。鯛焼き屋さんのソフトクリーム。」
「来年?」
「そう。来年。」
来年といえば高校三年生か・・・
いろいろ忙しいだろうなぁ。
ましてや夏なんて。
「無理だろ。受験あるし、そんなん食ってのんびりしてらんねぇだろ。」
「だからぁ、なんでそうハヤトくんは冷たいの」
「現実みてんだよ俺は」
「なんか生き急いでるよねぇ」
「悪かったな」
「そのソフトクリーム食べるために数分とるだけで死んじゃうの?ハヤトくんって」
「いや・・・」
きっと来年になったら、俺だって受験生らしくピリピリするだろう。
きっと精神的にだって追いつめられると思う。
でも、たった数分だけでも違うこと考えられる時間があってもいいのかな。
・・・じゃないと死ぬわ。

「じゃあ、来年食べるか」
「やったぁ♪さすがだねハヤトくん」
「おごらないけどさ」
「がっかり・・・」

いいだろう、数分くらいさ
大好きな子と一緒にのんびりするくらいさ
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