1/11ページ目 煌びやかな衣装。 うなじに塗られた白粉。 真っ赤な紅に、香油のきつい香り。 それに混じって酒の匂いが漂いそこかしこで睦言が洩れ聞こえ、喧騒が止まない夜。 京、花街島原にある揚屋。 その一室で千鶴は客である男に酌をしていた。 その姿はいつもの袴姿ではなく、派手な柄の天神特有の衣装だった。 「君は、お千と言ったか?まだここに来て間もないのに天神とは、なかなか先が楽しみだな。」 「ありがとうはんどす。お客はんも、ご立派なお侍はんみたいどすな。」 「ははは、そう言ってもらえると嬉しいモノだ。さぁ、もっと酒を持って来させなさい。今夜はとことん呑もうじゃないか。」 「へぇ、わかりもうした。」 静々と裾を翻し酒の追加を頼みに廊下へ出ると、千鶴は大きく肩で息を吐いた。 その背中に向って小さく声が掛けられる。 「・・・大丈夫か。」 「大丈夫です・・・ありがとうございます。」 「俺は隣の部屋にいる。もし・・・どうしても無理ならこちらの部屋へ来い。」 「いいえ、そんな事をすれば山崎さんのお仕事の邪魔になってしまいます。私は平気です。」 気丈に言い切る千鶴に目を向け、山崎はきつく目を閉じ口を噛み締めた。 「・・・健闘を祈る。」 「山崎さんも・・・。」 二人は決して顔を見合すでなく、背を向けたままそこで別れた。 山崎は右の部屋へ、千鶴は左の部屋へ。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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