1/5ページ目 そよそよと流れる風が髪を揺らしていた。 ぬば玉の如く黒い髪は軽く波打ち、褐色の肌によく映えた。 全身に施した刺青の意味も知らなかったけど、この男にはよく似合うなと見惚れていた。 ふいに風が止み、それに煽られていた私の髪もふわりと肩へ落ち着いた。 少し乱れて顔に掛かった髪は鬱陶しかったので、軽く被りを振ってみた。 そいつは、それを見て声も無く笑うと優しい微笑みを携えて一本一本髪を梳いてくれた。 「ありがとう。」 「どう致しまして。お前の髪はまっすぐだから、少し風に煽られりゃすぐに絡まっちまうな。」 無造作に、結う事も束ねる事もなく背中に垂らした髪を愛しげに梳きながら、男は、不知火匡は呟くように溜息を吐いた。 「・・・ん、いっそ切ろうかな。」 「何言ってる。勿体ねぇだろうが。」 「でも、手入れが面倒なんだ。匡みたいな髪なら良かったのに。」 「俺のはただの癖毛だ。お前の真っ直ぐな髪のが綺麗だろ。」 「そうかな・・・?」 「決まってんだろ、お前のが綺麗だ。」 髪が、の一言が抜けただけでドクンと心臓が跳ねる。 こいつの、こういう所が嫌いだ。 無意識にこっちの気持ちを掻き乱す言動が苛立つ。 何とも想ってないくせに、これから為すべき事を為す為に旅発つ私を掻き乱すこいつが嫌いだ。 「いつ?」 「明日。だから、今日が最後。」 「んじゃ、俺も明日にすっかな。お前が居なくなった此処に用はねぇし。」 また・・・。 さらりとそんな事を言うから、私は軽く横目で睨んでやった。 けど、こいつは私の苛立ちに気付いているのかいないのか・・・。 瞼を閉じて気持ち良さそうに寝転んでる。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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